熊野古道は、
「前向きになれる場所」
「人生が変わる場所」
そんなふうに紹介されることが多い道です。
けれど、歩いていると、
そう思えない日もあります。
何かを考えようとして歩き始めたのに、
途中で考えが止まってしまうことがあります。
答えを出したかったはずなのに、
なぜかどうでもよくなってしまう。
頭の中が空っぽになって、
ただ足だけが前に出る。
熊野古道を歩いていて、
特別な出来事が起きるわけではありません。
景色が急に変わるわけでもなく、
気持ちが一気に晴れるわけでもない。
それでも、
歩き終えて帰るころになると、
不思議と少しだけ状態が違っていることがあります。
何かが解決した、とは言えません。
前向きになれた、とも言えません。
ただ、
「このままでもいいかもしれない」
そんな気持ちが残ることがあります。
熊野古道は、
無理に前へ進ませる道ではない気がしています。
考えが途中で止まっても、
答えが出なくても、
そのまま歩いていていい。
立ち止まっても、
何も決めなくても、
置いていかれる感じがしない道です。
ここでは、
熊野古道を「前向きになる場所」としては書きません。
何かを達成したい人より、
いったん立ち止まりたい人に向けて、
歩いている中で浮かんだことを、
言葉と写真で静かに残していきます。
はっきりした答えは、出ません。
でも、考えが止まる時間そのものが、
あとから効いてくることもあります。
ここは、
そういう時間を記録する場所です。